取り組み

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医療技術の向上に向けて

東広島回復期リハビリテーション研究会を終えて 2015/01/30

東広島回復期リハビリテーション研究会が開催されました。

今回の研究会では、私が最初に感覚性失語症の患者さまの経過事例を報告させていただきました。

感覚性失語症は”音として聞こえているのに何を言っているのかわからない” ”相手に伝えているのに「ことば」として伝わらない”といった症状が顕著に表れます。

症例の患者さまも、入院中から自主訓練を含めリハビリに真摯に取り組まれましたが、退院して半年以上経った今でも机上検査では「聴覚的理解」の低下は否めない状態です。しかしご自分でも「聞く」ことは苦手であることを自覚され、自営であるお店に毎日出社し、LINEで会話を楽しみ、奥さまと社交ダンスを堪能して充実した日々を過ごしておられます。

回復期のリハビリに携わる言語聴覚士として、言語機能の最大限の改善を図る質の高いプログラムを実施することは当然ですが、退院後の生活を見据えた環境調整を行うこと、障害されている側面だけでなく「全人的な理解」が必要であること、人格を尊重し相互作用を高めることが大切であることを改めて感じた患者さまでした。

後半は三原市にある山田記念病院院長の山田徹先生に「私と認知症との関わり」というテーマでご講演いただきました。

脳外科医である山田先生が認知症の患者さまと関わるきっかけは、患者さまのご家族さんからのちょっとした一言からであったとのこと。それが三原駅前商店街の活性化に広がったこと、日々の何気ない風景や会話のエピソードからどんどんアイデアが生まれてくることなど、楽しいお話が満載でした。

先生のお話を伺いながら、ふと一人暮らしをしている母が「(年をとって)車の運転が難しくなったら、歩いて買い物と病院に行ける場所に引っ越したい」と言っていたことを思い出し「なるほどなぁ」と思いました。

私たちはつい患者さまの「できない(できなくなった)こと」に目を向けがちです。リハビリを通じて改善することは素晴らしいことですが、少し視点をかけてその人が「幸せ」になることを一緒に見つけていけることが大切なのだと思いました。先生はその一つに「懐かしさ」を挙げられました。『回想法』をケアに活かす取り組みがされるようになって久しいと思いますが、先生はもっとスケールが大きく、施設のフロアーごと「疑似ふるさと」にしてしまうという発想をお持ちでいらっしゃいました。

同時代を生きた人たちと同じ方言を使って体験談に花を咲かせることが出来たらきっと楽しい時間が共有できると思います。私が高齢者となった時、隣のおばあさんとピンクレディーのUFOを踊り、お茶を啜りながら広島弁でカープを応援できたら…悪くないなぁと思えたお話でした。貴重なお話をありがとうございました。

言語聴覚士 平山孝子