取り組み

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地域の皆様に愛される安全で質の高い病院づくりに日々取り組んでいます

医療技術の向上に向けて

患者家族勉強会を終えて 2015/05/30

「自分にもできることがある。それが本当に嬉しいんです。」

Wさんは、元々教員をされていましたが、2年前に脳梗塞を発症しました。当院の回復期病棟でリハビリを受けた後は、外来で通院されています。現在も失語症(特に、言いたい言葉が出てこない症状)や右片麻痺が残存していますが、積極的に地域社会へ参加されようとしています。その手助けとなることができれば…とリハビリ担当者が患者家族会での発表を発案しました。

患者家族勉強会は、リハビリテーション科のスタッフや医師が患者さんやご家族が興味・関心を持っている分野について月に1回、情報提供させていただいている場です。また、会の後半では、参加者の方同士で話をしたり、今、困っていることについてスタッフに相談できる座談会を設けております。患者さんやそのご家族と同じ目線から語られる言葉というものは、私たちリハビリスタッフとはまた違った、その方たちを元気づける・その方たちの心に響くのではないかと考えたことがあり、Wさんに今回の患者家族勉強会での講演を依頼するに至りました。

(Wさんは、「是非!やりたいです。」と依頼を快諾してくださいました。それからは、“今、伝えたいこと”を毎回書き出して来てくださり、私がそれをスライドにまとめていくサポートをさせていただきました。麻痺のある利き手(右手)に変わって非利き手(左手)を使っておられますので、本当に大変な作業であったことと思います。)

当日は、予定していた人数の倍の方が参加されました。その中にはWさんのご両親や息子さん、訪問看護師の方の姿もありました。テーマは「“きょうよう”のある人 “きょういく”のある人」。“きょうよう”とは「今日、用事のある人」、“きょういく”とは「今日、行くところのある人」を意味します。この言葉を心に、退院後、様々な行事に参加して感じたことを発表されました。

「あぁ、やっぱり緊張するね。」会の前後にWさんが漏らした一言です。失語症のある方が、大勢の人を前に話をされるというのはどれほど勇気がいるのでしょう。しかし、そのことはおくびにも出さず、落ち着いてゆっくりと自分の言葉で人々に伝えていかれる姿には、本当に心を打たれました。

「自分にもできることがある。それが本当に嬉しいんです。これからも自分にできること見つけていきたいと思います」。最後はこの言葉で締めくくられました。今、何の気なしにしている小さなことでも自分でできるということ・“きょうよう”があり“きょういく”のあることというのは本当に幸せなことなのですね。

会終了後には、Wさんのご両親や息子さん、そしてWさんからの「ありがとうございました」という感謝の言葉をいただきました。それは私にとって他の何ものにも代え難い嬉しい言葉であり、言語聴覚士になって良かったと思える言葉でした。Wさん、こちらこそ本当にありがとうございました。

今後も、この会がさらに良いものとなるよう取り組んでいきます。